慰安旅行 -5-



 べつに、風呂でセックスするのが初めてってわけじゃないんだけど。
 昨日から散々焦らされてるからか。
 それとも、自分だけ全裸だからか。
 色々思い当たる節はあるのだが、

「やっあ…! レノ…」
「イきそ?」

 俺を後ろから抱き締めたまま湯船に浸かるレノ。
 舌で俺の耳と項を、両手は胸の突起を弄り続ける。

 キスだけで絶頂を向かえてしまった俺は、胸の飾りをキュッと摘まれるだけで再びイってしまいそうだった。

 考え事なんてしている状況じゃない。
 ただ、レノから与えられる愛撫に感じる事しか出来なかった。

「我慢しろよ、と」

 胸を弄っていた手が移動して、爆発まで秒読み段階の俺自身に触れた。

「っ?! ちょ、や―――…っ!!」

 想像を絶するほどの圧迫感。
 レノの髪を結んでいたゴムが、喰い込むほど強く俺の半身を締め付けていた。

「ひっ…っ……っつ……」

 強烈な痛みと、強制的に抑えこまれた熱に、頭の中はパニック状態。
 レノの腕の中で、全身がビクビクと痙攣する。

「直ぐに痛みなんか感じなくなるからよ」

 楽しげなレノの声は、その台詞を更に残酷な台詞に変える。

「そこに手、着け」
「っ……ぇ…?」

 言葉が耳に届いていても、理解はできない。
 すぐに行動に移せない俺の腕を掴み、バスタブの淵に手を着かせる。

「腰上げろ」
「?! や、やだっ…」

 だって、そんな事したら…レノの目の前に腰を突き出すような体勢になってしまう。

「拒否権なんかねーぞ、と」

 腰を捕まれて強制的に持ち上げられた。

「いい眺め」

 口笛なか吹いて、レノは楽しそうに笑った。
 それに対して、俺はただ、ただ、恥ずかしくて…震える足腰で必死に体勢を保持した。

ちゃんの恥ずかしいトコロ、全部見えちゃいますね、と」
「レ……」
「じゃぁ、味見といきますか」
「っ?! ひっ…やぁっ、ああっ!」

 生暖かくて柔らかいモノが後ろの蕾に触れた。
 ピチャピチャと淫猥な水音を奏でて、レノの舌が俺の蕾を舐めまわし、ソコが少し柔らかくなると舌の先端を尖らせて差し込まれる。
 痛みで萎えかけていた俺の半身は、すぐに熱を含んで頭を持ち上げた。
 そんな俺の淫らな躰を見て、レノがクスリと笑った事くらい想像がつく。

「ひっ、ぅ…レノぉ!」
「んー?」
「こ、んなの、ヤ…ダ……っ」
「とか言いつつ、ホントはイイんだろ? だって、こんなに」

 チュッと音をたててソコにキスされる。

「ヒクついてんじゃん」

 ポタポタと瞳から涙が溢れて、湯の中に雫が落ちた。

 ヨくて。
 痛くて。
 恥ずかしくて。

「レノぉ…」

 振り向いて、レノに救いを求める。
 レノは、涙に濡れた俺の真っ赤な顔を見て愉しそうに笑った。
 悪戯をしている子供のように?
 違う。
 欲に染まったその瞳は、もっと残酷に哂っている。

「そんなツラして…煽るなよ、と」
「ひっやっ! あっ…!」

 急に指を差し込まれて、ぐりぐりと中のイイトコロを刺激される。
 1本から2本、3本、直ぐに指は増やされて俺のナカで猛威をふるう。
 慣らしているんじゃない。
 この動き…レノは俺を壊そうとしているんだ。

「やっ、やめ、やっ、あぁ――っ!!」

 ぶるっと全身が大きく震えた。
 そして直後に襲ってくる脱力感。
 かろうじて意識はあるけど、頭の中は真っ白だ。
 だらしなく空いた口からは涎が零れた。

 イった時の感覚と似てる。
 でも、似ているだけで、確実に違う。

「…んっ…あ、あぁ…」

 カラダの熱が冷めない。
 目の前がぐるぐると回ったまま、体内で蠢くレノの指に再び感じてる。

「…はっ…ぁあっ、は…」
「ドライオーガズム…ってヤツ。まだイケるだろ?」

 グチュッと音をたてて指を引き抜かれる。
 そのまま、その指は、本来出すべきモノを出せずに、未だ勃ちあがったままの俺の下半身に触れた。

「やぁぁああぁぁっ!!」

 ツツ…と指先で撫でられられただけ。それなのに。
 射精できないせいで治まる事のない体中の熱は、とうとう脳まで溶かしだしたのか。
 ゴムできつく絞められて反応すればするほど痛みが増すのに、それでも萎える事がない。
 既に痛みは快楽だった。
 
「レノっ、レノっ!」

 後ろの蕾が、次の快楽を求めてヒクヒクと蠢くのが自分でもわかる。

「言ってみろよ、と」
「うっ、ひっく、ぅ…」
「出したい?」

 たぶん、この下半身の戒めを解かれたら、精液を撒き散らして俺は意識を失うだろう。

「欲しい?」

 でも俺の理性はとっくにぶっトんでいて。

「…い」
「聞こえねぇ」


 眉間に皺を寄せて。
 眉を垂れさえて。
 涙を零しながら。



 ゆっくりと頭を首だけ動かし、背後のレノに懇願するように。



「欲しい…」



 より強い苦痛と快楽を。



 レノがニヤリと厭らしい笑みを浮かべたのが見えた。
 腰に手を回されて、縋りつくようにしていたバスタブの縁から躰を離されてた。
 為すがまま躰の向きを変えられ、レノに跨る姿勢。対面座位。
 ようやくレノの顔が見れて、それが嬉しくて、自分からレノの首に腕を絡めて口付けた。
 俺からのキスに上機嫌で応えながら、レノはジッパーを下げて、既に熱く猛った性器を取り出す。
 グリッと後ろの部分にソレを押し付けられて、よりキスを深くする。
 早く欲しくて。
 メチャクチャにして壊してほしくて。

「レノ…」

 キスの合間に囁く。

「挿れて…」

 熱い。
 苦しい。
 助けて。
 でも、やめないで。
 どうせ壊すなら、壊し尽くして。

「舌、噛むなよ」
 
 深く舌を絡めたまま。
 貫かれる。










 と、思ったんだけどな。





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